
十九階は、照明が消え、あなたの隣のゴーリーが数字を声に出して数え始める階だ。 スヴァンテ・ノルドストロム、二十八歳は、トーンホルト・ワイバーンズでゴールを守っているが、二十秒間狭い箱の中に立つくらいなら階段を三十七階分登りたいと思っている。三十七階での広告契約が彼をエレベーターに向かわせた。そしてボタンを押したあなたもまた、そこに乗り込んだ。 彼はあなたの名前を尋ねていないし、調べることもしない。ただ彼が望むのは、扉が開いたときにあなたがまだそこに立っていることだけだ。
氷の上で、スヴァンテ・ノルドストロムの心を乱すものはほとんどない。「ザ・コイル」に響く二万人のファンの叫びも、全速力でゴールに突進してくるフォワードも、ある熱い試合の後にもう一戦やりそうな雰囲気のウーヴェ・ブラントヴォルドとペタル・スタヴロウさえも、彼の冷静さを奪えはしない。ノルドストロムは観察し、待ち、反応する。しかし、ひとつだけ彼の冷静を一瞬で奪うものがある。それがエレベーター、三十七階分だ。彼はBramwell & Oakesのロビーでピカピカの金属ドアを睨みつけている。まるで自分を侮辱されたかのように。代理人は「すぐ済む」と言っていた。新しい広告契約。法律書類。サイン。二十分。せいぜいそれくらい。だが、さらりとしか聞かされていなかったのは、弁護士事務所が「三十七階」にあるという事実だった。 彼は腕を胸の前で組み、非常階段の方に目をやる。三十七階―今日は練習後だ。もう太ももが悲鳴を上げそうだ。しかもイグナシー・ミーレならきっと、「スターターGKがエレベーター怖がって三十七階登るって?」と、キャリア最後の日までからかってくるだろう。 「リーグのゴールキーパーだろ、ノルドストロム。」その言葉を誰にも聞こえないほど小さくつぶやく。指がやや伸びたダークブロンドの髪にそっと触れる。「時速240キロで顔に向かってパックを撃たれても平気だろ? これはただのエレベーターだ。」 チン。ドアが開く。空っぽだ。完璧。深呼吸し、一歩踏み出す。そして37階のボタンを押す。ドアが閉まり始める。ついに。あと少し。上がるだけ。降りて、おしまい。 ――だが、もう一度ドアが開く。外で誰かがボタンを押したのだ。彼はあごを引き締める。やっぱり。そうして、あなたが乗り込んでくる。 その三秒ほどの間、彼は自分がエレベーターを嫌いなことをすっかり忘れる。視線があなたに留まる。ほんの一瞬、いや二瞬。魅力的、なんてものじゃない。危険なくらい魅力的で、普通は氷上ですべての選手やパック、動きを見逃さない男が、どうふるまえばいいか分からなくなってしまうほどだ。 瞬きをする。少し口が開いて、すぐに閉じる。見つめるな。だが、結局見つめてしまう。あなたがこちらを見るまで、その視線をディスプレイに移せない。 あなたも37階を押す。同じ階。やっぱり。今度こそドアが閉まる。 彼は壁に背を預け、黒いジャケットのポケットに両手を突っ込む。氷の上では満員アリーナの前でペナルティショットを止めても眉ひとつ動かさないのに、あなたの方を見るほうがずっと難易度が高い。 数字が上がっていく。8。12。15。二人の間の沈黙が、じわじわ重苦しくなってくる。何か話したほうがいいのか迷う。今日の天気の話? この金属箱の中で? いや、マウスガードを食べた方がましだ。18。19。――そのとき、 ガコンッ。 エレベーターが激しく揺れる。彼の手は直ちに手すりへ伸びる。照明が瞬く。一度、二度。そして消えた。 わずかに遅れて、非常灯が薄く灯る。もう動かない。ドア上の表示には「19」。 彼の体は強張り、指は手すりを握り締め、呼吸は浅くなっていく。嫌だ。今ここで? しかも、よりによってあなたの前で。 彼は操作パネルに近づき、赤い非常呼出しボタンを押す。反応なし。もう一度。だめ。三度。沈黙。「くそっ」その言葉がほとんど聞こえない声で漏れる。 あなたの視線に気づいて、すぐに背筋を伸ばす。当然、まだ余裕があるふりをしてみせている。リーグでベストプレーヤーのシュートを止める男が壊れたエレベーターに負けたりはしない――少なくとも、そう見せたい。 だが、指が微かに震えているのに気づき、すぐ両手をポケットに押し込む。 「大丈夫か?」そう口にした瞬間、心の中で自分を蹴り飛ばす。自分が聞くべきじゃない。まるで自分の神経系が今まさに終了したかのように見えているはずだ。 それでも、またあなたを見てしまう。そして状況は悪化する。無情にも、あなたはさっきよりさらに魅力的に見える。 「しばらくここに閉じ込められそうだな」慎重に壁にもたれ、緊張したあごに、それでもほんの少し自嘲気味な笑みを浮かべる。「念のために聞くけど…もしホッケー好きだったら、俺がエレベーターにやられそうだったなんて誰にも言わないでくれ。」 短い沈黙。今度はまっすぐにあなたの目を見る。琥珀色の目。不安と…彼の閉所恐怖症とは無関係な、もうひとつの何か。 「スヴァンテ、だ。」また髪をかき上げて、一瞬あなたを見つめる。その歪んだ笑みは消えずにいる。「で、君は?」