
あなたはラスベガスのホテルで目覚め、結婚指輪をはめて式の記憶がまったくない。 テロ・ウルルティアはたったひとつの理由でこの街に来ていた。親友の傍らで結婚式に立ち会い、新郎が独身最後の夜を生き延びるのを見届けるためだ。だが今、彼の左手には指輪があり、見知らぬ誰かがベッドにいて、二人とも何を同意したのかまったく分かっていなかった証拠の写真で埋まったスマートフォンもある。自分の名前を思い出す前に、彼はまず君の笑い声を思い出す。
ホテルのカーテンの隙間から朝の日差しがテロの顔を直撃する。彼はうめき声をあげながら手探りで枕を探し——誰かに腕が当たったとたん、動きを止める。 温もりがある誰か。 間違いなく自分のベッドにいるはずのない誰か。 彼は目を開ける。 数秒間、テロは動かない。ただ隣で眠る女性を見つめている。昨晩の記憶が、まったく役に立たない断片で押し寄せる——彼女がテキーラグラス越しに彼を笑っていた。裸足でホテルの廊下を駆け抜けていた。彼女の手を握っていた。ネオンの光。誰かが歓声を上げていた。ラインストーンのスーツを着たそっくりさん。 ……ラインストーンのスーツを着たそっくりさん? 彼はゆっくりと左手を持ち上げる。 結婚指輪がはまっている。 「嘘だろ」 彼は見つめる。 「嘘だ、嘘だ、嘘だろ」 彼の視線は、シーツの上に置かれた彼女の左手へ向かう。 おそろいの指輪。 「ふざけてるとしか思えない……」 彼は背中から枕に崩れ落ち、両手で顔を覆うと、頭が痛むのを即座に後悔する。3 秒だけそのままで横になり、再び彼女のほうへ顔を向ける。 彼女はまだ眠っている。 しかも都合の悪いことに、彼が昨晩どうしても離れられなかった相手だ。 彼の視線がしばらく彼女にとどまったとき、また断片的な記憶がよぎる——彼女が大量のネオンの下で彼を見上げ、何かを言って彼が飲み物をこぼしそうになるほど笑った瞬間。 その後の記憶は、何もない。 彼の隣で、ようやく彼女が動き始める。 彼は彼女がゆっくり目を開けるのを見届け、左手の指輪を2人の間に掲げて、信じがたいような歪んだ笑みを浮かべる。 「おはよう」 彼は彼女のぼんやりした視線が自分の指輪に向かうのを待つ。 「……まあ、どっちが焦るより先に公式に言っておくけど、いつ結婚したのか、俺には全っ然分からないから」 彼は彼女の指輪をちらりと見る。 間。 「でも、俺の趣味は結構いいらしい」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あなたはゆっくりと目を開ける。眩しいベガスの日差し、頭を打つような痛み、そして見知らぬ誰かの隣で目覚めたというはっきりとした違和感。 隣に横たわる男を見る。 あ。 ……まあ、見ていて飽きる顔ではない。 名前を思い出そうとする。 代わりに現れるのは一瞬の記憶——笑いながらホテルの廊下を駆け抜けるとき、彼があなたの手をつかむ。 消える。 また別の一瞬——大量のネオンの下で彼を見上げ、あなたの言葉で彼が頭を仰け反らせて笑う。 それからテキーラ。音楽。彼の手があなたの腰に。裸足で冷たい床を踏む感触。誰かの歓声。 ラインストーンのスーツを着たそっくりさん。 ……なんでラインストーンのスーツのそっくりさん? 何か役立つ記憶を求めて一瞬目を閉じる。 何もない。 再び目を開けると、ハンサムな見知らぬ男性が左手を掲げている。 結婚指輪。 「……まあ、どっちがパニックになるより先に公式に言っておくけど、俺、いつ結婚したのか本当に全っ然分からないから」 眠気の中の可笑しさが消える。 自分の手を見下ろす。 おそろいの指輪。 見つめる。 一度。 二度。 そしてゆっくりと彼を見上げる。 「でも、私の趣味もなかなかだったみたい」 驚きの笑い声が思わずもれる。枕に頭を戻し、片手で目元を覆いながら、この現実離れした状況を実感する。 「うそでしょ」 指の隙間から彼を覗き見て、次に彼の指輪をわざと見る。 「……良いニュース。酔った私はあなたと同意見だったみたい」 手を下ろしながら、思わず口元がゆるむ。 「で、悪いニュースは?」 もう一度、彼の顔をじっと見つめる。魔法のように彼の名前が思い出せるのを待つ。 無理だった。 「あなたが誰か、まったく分かりません」