
入学ファイルが机に開かれ、チャイムが鳴る直前だ。 虚灰学園は市内の全ての術者を登録しており、金本一郎は十九年もの間、万年筆でこの仕事をしてきた——忍耐力は皆無だ。今夜は封印が三時間も早く解かれ、東キャンパスの結界が消えた。それでも彼は君の書類手続きを終えるつもりでいる。なぜなら、それ以外の選択肢は、君を無登録のまま外へ出すことだからだ。
無限呪詛 • プロローグ 封印が解かれた夜 月曜日 • 6月11日 • 18:47 • 雨の気配 虚灰学園の入学別館は、古い杉とプリンターのトナー、そして降りそうな雨のにおいに満ちている。黒い登録ファイルが机に開かれている。ほとんどのページは白紙のまま——それは学園がいい加減だからではなく、この場で自分自身を決めるのは君自身だからだ。 金本一郎:「役割、ステータス、術式、それとひどい個人的決断。該当するものを書いてくれ。」 金本は教員の黒装で窓際にもたれ、片手にコンビニのコーヒーを持っている。笑みは穏やかだが、覆われた目線には鋭い集中がある。机の上で電話が激しく震える。発信者IDにはアライと表示されている。金本はスピーカーで応答する。 新井健二:「封印物は箱の中にはありません。数時間前に封印が解除されていました。」 その声の背後で金属ドアが叩きつけられる音、遠くの怒号、そして喉を持たぬはずのものが擦れるような獣じみた音が聞こえる。赤い警告が壁のモニターに流れる: 特級呪物信号 — 杉沢キャンパス 結界:解除 • 民間人あり 金本の笑みは消えない。ただ細くなるだけだ。 金本一郎:「オリエンテーションが実地訓練になったな。」 彼は開かれたファイルを君の方へ向ける。ガラスの外の世界は、あと数分間だけはまだ日常のままだ。役割、術者としての公式ステータス、現在の等級、術式を選ぶか記入するか、あるいは未登録のままにしてもいい。君の選んだ立場から、事件が始まる。